こんにちは!リーガルゲート塾長の福田です。
2023年も4月となり、暖かい春の陽気になりました。年度のはじめの季節ということで、法曹資格を得るために、予備試験に挑戦したいと考えている方もいると思います。
そこで、今回は、主に予備試験の勉強を始める前の方や、独学で勉強をはじめたものの、思うようにいかないと感じている方等を対象に、予備試験に独学で合格することが可能なのかについてお話ししたいと思います。
目次
まずはじめに
詳細は後述しますが、結論として、独学で予備試験の合格を目指すことは、相当ハードルが高いコースと言わざるを得ないと考えます。例えるなら、プロの山岳ガイドなしで、いきなりチョモランマ(標高8848m)の登頂に挑戦するような感じでしょうか(ちょっと大げさかもしれませんが、イメージこんな感じかと思います)。
そのため、独学での予備試験挑戦というのは、趣味として予備試験の勉強をしているという方は別として、本気で合格を目指す場合には、基本的にはあまりおすすめできるコースではありません。
以下ではその理由や、それでも独学をベースに勉強する必要のある方向けに、どのように勉強していけばよいか等について、私の見解をお伝えさせていただければと思います。
なお、そもそも予備試験とはどういう試験かよくわからないという方は、「司法試験予備試験とはどんな試験?試験概要や受験するメリットについて」をご参照ください。
また、「独学」が何を指すかは時と場合により異なると思いますが、今回は最もわかりやすく、また皆さんが通常イメージするであろう、「予備校(個別指導含む)を使わず、完全に市販教材のみで合格を目指し勉強すること。」と定義することにします。
司法試験予備試験合格を独学で目指すメリット
ではまず、独学で予備試験の合格を目指すことのメリットについてご紹介します。
①勉強にかかる費用を抑えられる
独学で勉強する理由のうち最も大きいものは、費用の節約であると思われます。この点については、大手の予備校の場合、基礎講義の受講におよそ70万円~120万円程度はかかってくるため、この基礎講義を受講しないことにより、少なくとも基礎講義代については、費用を節約することが可能になります。
②自分のペースで勉強できる
予備校の基礎講義は、予備校のカリキュラムとして一般的な基礎編と論文編をあわせると、合計で数百時間に及ぶことになるため、勉強開始してしばらく(だいたい1年~2年程度)は主に講義の消化に時間を使うことになり、勉強のスケジュールも基本的には予備校の講義のカリキュラムに沿って進められるという点で、勉強のペースは予備校の講義によって画定されがちです。
この点は、スケジュールを決めやすいといういい点もあるのですが、あくまで自分のペースで勉強したい方にとっては、不自由だと感じてしまうかもしれません。
他方、独学であれば、完全に自分でスケジュールを決めて、自分の思う通りのペースで勉強ができるため、勉強の自由度という点では、独学に軍配が上がると思います。
以上が予備試験を独学で挑戦する場合の主なメリットになります。
司法試験予備試験合格を独学で目指すデメリット
独学で予備試験の合格を目指すことのデメリットとして考えられるものについては、以下の通りです。
①理解が進まない+メリハリをつけられない→最終合格まで時間がかかってしまう可能性がある
他の試験と比較した予備試験の特徴として、法律用語がたくさん出てきて難しく、また試験範囲がかなり広いという点が挙げられます。予備校の基礎講義というのはまさにこの点を何とかしようという目的、すなわち「難しいものをなるべく簡単にわかりやすく、かつ試験対策の観点から必要な部分に絞ること」を目的として提供されているものであり、この点からはかなり重宝します。
しかし、独学だとこの点はビハインドなりうるところです。すなわち、まず理解の点においては、書籍に書いてあることがわからなくても、講師による映像講義等はないため、他の書籍を参考にするくらいしか調べる方法はなく、それでもわからないものは放置せざるを得ないです。書籍による文字での学習のみより、対面や動画で講師がわかりやすく説明してくれた方が、理解が進むのはいうまでもないでしょう。
また、メリハリという点では、予備試験は短答試験で9科目(一般教養を除く)、論文試験も10科目あり、また一つ一つの科目の範囲はかなり広いです。民法とかは、最初勉強した時の絶望感がすさまじいです。余談ですが、福田は最初民法を勉強した時、範囲が広すぎて、途中民法が嫌になり、関係のない英語の勉強とかに走ったという残念な過去があります。
ただし、試験との関係では、すべての範囲からまんべんなく出題されるわけではなく、論文用に重要な部分、短答用に重要な部分という観点で、かなり絞り込めます。特に論文的に重要な部分は、ざっくりした体感ですが、全体の2割~3割程度まで絞り込めるのではないでしょうか。予備校の講義や個別指導を受講している場合、講師が「ここは試験との関係ではさっと見ておくくらいでよい」「ここはAランクで定義までしっかり暗記することが重要」等と、ランク付けをしながらメリハリをつけて指導してくれるため、この絞り込みという点からは安心です。
一方で、独学の場合、どこが重要でどこが重要でないかの判断をつけにくく、メリハリをつけにくいという難点があります。その結果として、合格するまでにかなりの時間を要してしまった、というケースもかなりあると思われます。ただし、たとえば予備校の講師が出している書籍(伊藤塾の呉講師が書いた基礎本シリーズ等)では、丁寧にランク付けがされているものもあったりするので、こういった書籍を利用して、ある程度メリハリをつけた学習をすることできなくはないかと思います。
②論文対策が非効率になりがち
独学のデメリットの2点目は、論文対策の問題です。予備試験の論文試験の問題は、他の資格試験とはだいぶ異なっており、白紙の答案に0から論証を積み上げていくことが求められます。問題文の読み方、論証の展開の仕方、事実の評価の仕方等、論文試験において合格答案を書きあげるまでには、かなりハイレベルな能力が求められることになりますが、予備校の論文講義を受講する場合、この点についてある程度教わることができます。また、一方的な論文講義では確かに限界はありますが、リーガルゲートが提供しているような個別指導を併用してマンツーマンで訓練することで、合格レベルまで一気に実力を高めることが可能です。
他方、独学の場合、この勉強を完全に自分で身に着けていかねばなりませんが、これは正直かなり難しいと思われます。仮にコツコツと勉強を続けることができても、我流でやったばっかりにその方向がずれてしまうと、のちに修正するのがかなり困難になってしまう可能性もあります。コーチをつけずに我流でゴルフの練習をしていたために、変なフォームや癖が身についてしまい、結果上達に時間がかかってしまった、みたいな感じでしょうか(ちなみに、この例は司法修習生時代の私です。適当に遊び感覚で打ちっぱなしに行っていたことを非常に後悔しています)。
また、論文対策用の市販教材は、最近はいいものが出てきています(おすすめは後述します)が、それでも予備校教材の方がクオリティ的にも軍配が上がると思います。
③合格までのロードマップをうまく立てにくい
上述した独学のメリット②と表裏一体なところですが、独学だと完全に自分で合格までのロードマップを立てて自分のペースで勉強をしなければなりませんが、この点は一人だとなかなか難しい面があります。これも試験対策期間が1か月で終わるような試験であればまだ自力でなんとかできるかもしれませんが、短期合格を果たす優秀な方でも2.3年はかかる日本最難関レベルの予備試験となると、自分で合格までのロードマップを適切に引き、淡々と実行していくことは、かなりの困難を伴うと思われます。他方、予備校や個別指導を使用していれば、カリキュラムに沿って勉強することで合格まで最短で勉強することができるので、この点からも独学だと苦戦する可能性は高いと思われます。
④試験対策上必要な情報を収集しにくい
予備試験は法律を扱う試験のため、頻繁に改正がされます。そのため、改正に関する情報収集はマストです。また、過去問で何が出題されたかといった情報も、日々の勉強をしていく上では重要です。そのため、予備試験においては、情報をどれほど保有しているかというのも合格するためには重要な要素であると考えます。そして、これらの情報は、予備校で最新の講義を受けていたり、個別指導を受講していれば講師を通じて勝手に収集することができますが、独学で勉強している場合、自分自身で適宜チェックする必要があります。チェック漏れはかなり重大な失点につながる可能性もあることから、この点もデメリットの一つになり得るといえるでしょう。
司法試験予備試験は独学で合格できるのか?~回収可能性をふまえた投資の判断~
以上の独学のデメリット4点を踏まえると、独学での予備試験合格は、「不可能ではないが、相当厳しい」と言わざるを得ないと考えます。一握りの天才や秀才ならできなくはないでしょうが、自分がこれに該当しないと思うのであれば、あまりお勧めのルートではないです。私自身も、予備校には勉強開始当初からお世話になっており、幸い上位で予備試験・司法試験に合格することができましたが、決して天才の部類ではなかったので、完全独学であれば、正直合格は厳しかったと思います。
また、令和4年の予備試験のデータでみても、予備試験の最終合格率はわずか約3.6%(受験者数13004人、合格者数472人)。合格者のうち学部生とロースクール生が約7割を占めており、社会人の合格率だけみると1%台まで下がっていることがわかります。こういった数字からも、やはり独学だと困難な面はあると思われます。
実際、私は何人もの予備試験合格者を見てきましたが、完全独学で受かった人はほとんど会ったことがありません。ロースクールのみで合格したような知り合いはたまにいたりはしますが、純粋な独学という意味ではほんとに少ないです。実情としては、予備試験合格者のうち、ほとんどは予備校や個別指導を使用して受かっていると推測されます。私見ですが、独学か非独学かは、「現時点での予備校代や個別指導代の節約を重視するか、短期での合格や長期的リターンを重視するか」という投資判断の観点に収束すると感じています。
独学だと確かに受講費用が浮くといったメリットはあります。もっとも、独学で回り道せず最短で合格することは極めて難しく、予備校を使用した場合と比較して、一般的には合格までに長時間要する可能性が高いと思われます。
合格後に法曹等になることで、大幅に年収がアップする可能性もあることを踏まえると、早期に合格することは、長期的にみたら経済的リターンも大きくなる可能性が高いと思われます(合格が1年遅れた場合、1年早く受かった場合と比較して、1年早く受かったと仮定した場合の最後の1年分の年収が失われてしまうため、人によっては数千万円の損失になる可能性があるととらえることもできると思います)。また、私の経験ですが、実務に出てみると、1年間の差というのは想像以上に大きく、もう少し早く受かってればな…と思うことは正直何回もありました。
以上から、予備試験の対策を開始するにあたっては、「予備校や個別指導に投資することは、現時点での節約を選ぶ場合と比較して、価値があるか。回収可能性は高いか」といった観点から、独学か非独学かを選ぶことになるでしょう。
まとめ ~サイド独学という選択肢~
以上を踏まえると、本気で予備試験の合格を目指す方には、やはり独学ではなく、予備校+個別指導という選択肢が望ましいことは否めません。安い出費ではないものの、「時は金なり」と考えて、短期合格のためにこれらを使うことは、良い投資になる可能性は十分にあると考えます。しかし、主に金銭的な問題から、「どうしても独学でいかざるを得ない…」という方もおられると思います。そんな方には、私から、「サイド独学」のルートをおすすめしたいと思います。
サイド独学とは、私が思いつきで考案した名前です(最近流行りの「サイドFIRE」を真似して名づけました笑)。要は費用をなるべく安く済ませる観点から、基本は市販教材を使用して勉強しつつ、補完的になるべく安価な予備校講義や個別指導を併用して合格を目指すという手法です。
まず、市販教材としては、各科目、
- ①インプット用のテキスト(各科目のおすすめはツイートしていますので、福田のTwitterをご確認ください!)
- ②論文問題集(おすすめは辰巳のえんしゅう本か伊藤塾の試験対策問題集です。)
- ③短答過去問(おすすめは肢別ではなく体系別になっているもの。福田は早稲田セミナーの体系別過去問集を愛用していました)
をそれぞれ1冊用意し、これらの教材を完璧になるまで何回も回していくとよいと思います。
そのうえで、予備校講義の中で安価なもの、たとえばスタディングの予備試験講座(この記事を執筆した2023年4月現在、2023年・2024年対応の講座で89,100円~となっており、他の予備校と比較してかなりの格安になっています)等を使用して、理解を補うという選択肢は十分あり得ると考えます。
また、個別指導であれば、手前味噌になってしまい恐縮ですが、たとえばリーガルゲートでは、半年から1年といった長期間受講する通年コースとは別に、スポットコースとして、最短4回、1回あたり12000円~で良質な個別指導サービスを提供していますので、サイド独学のお供として、比較的お気軽に使っていただけるのではないかと思います。なお、リーガルゲートであれば、試験をよく知る講師による個別指導とは別に、受講生向きに無料でゼミ等のイベントにご参加いただけ、受験生間の横のつながりも作れるので、効果や満足度はかなり高いのではと自負しております!
これらの比較的安価なサービスを、独学を補完するためにサブ的に使用する形でも、上記の独学のデメリット4点はだいぶ解消されると思います。独学を考えている方は、ぜひこのサイド独学も視野に入れていただけると嬉しいです。
以上、予備試験と独学をテーマにお話しさせていただきました。勉強を始める際のご参考にしていただき、予備試験に挑戦すると決めたのであれば、ぜひ合格に向けて頑張ってください。リーガルゲートも、講師陣、スタッフ一同、最大限応援させていただきますので、お気軽にサイトのお問合せフォームよりご連絡ください。お待ちしております!
2023年4月 春のにおいがする夜の、静まり返ったオフィスにて 福田尚史