講師の与五沢悟です。合格体験記の後編となる今回は、予備試験初受験から具体的な合格までの道のりをまとめています。前編から続いて、ぜひ参考までにご一読くださると幸いです。
※前編をまだ読んでいない方は「【与五沢悟講師 合格体験記 後編】ルーティン化の軌跡。予備試験・司法試験に合格するまでの道のり」をご参照ください。
目次
初となる予備試験受験(2020年) 〜短答試験を振り返る〜
年が明け程なくして、短答の勉強のウエイトを増やし始めました。短答の過去問は、ここまでに既に2周ほど解いてはいましたが、まだまだ定着していません。
一度解いていてもわかっていない可能性があるので、前日に解いた問題は、翌日の通勤電車の中で復習しました。ペンキを塗っていくイメージでしょうか。とにかくテキストを読み返して、知識の定着を図っていきました。
そして、短答式試験がある5月の2か月前の3月からは短答に専念しました。短答過去問集をやり込んだ結果、最終的には正答率は90%を超え、なんとか合格。
短答式試験を受け終わってみると、思ったよりも知識が定着していない、本当に曖昧な知識は役に立たずで、むしろ有害だと痛感しました。本番では普段以上に迷ってしまい、時間が奪われたことを鮮明に覚えています。
初となる予備試験受験(2020年) 〜論文試験を振り返る〜
短答試験に合格しても、その2か月後には論文試験です。論文試験に向けて何をするか迷いましたが、休みを取れそうもなかったので、これまでやってきたことの精度を高めることに専念しました。そのため、模試や直前答練は受講しませんでした。
初の論文試験は、精一杯のことを書き、受験後は急いで再現答案を書きました。
私は万一論文に合格していても、仕事の休みは取れそうもないので、論文合格発表後の2週間で口述試験対策は無理だと考え、この時期から口述過去問を解き始めました。とても難しく、驚きましたが、逆に論文合格者の方のすごさを見ることができ、大変刺激になりました。
また、同時期に公法と商法を除く司法試験の過去問にも着手(口述試験に関係のある科目から着手しました)。司法試験は予備試験以上に難しい問題でしたが、出題趣旨や採点実感等で出題者のメッセージを読むことができ、とても新鮮で勉強になることばかり。
今振り返ってみると、この時期の勉強は最終合格のための実力養成に大きく貢献したと思います。結局、論文初挑戦は、1000位台前半で不合格。もしかしたら合格しているかもしれないと淡い期待を持っていましたが、そう甘くはありませんでした。
再現答案の分析と勉強方針の再構築
早速自分が書いた再現答案と合格者の再現答案との分析をしました。再現答案を書く過程で自分のミスがどんどん判明していくので、とても辛かったのですが、収穫はとても大きかったです。
再現答案を分析すると、自分の答案は以下の4点の問題点があることがわかりました。
- ①事実を使い切れていない
- ②書きたい論証を書いているだけで事案に即した答案になっていない
- ③知識の穴が大きすぎる
- ④判例を全く意識できていない
で今振り返ると、この再現答案の分析は最終合格に直結する最も大事な作業だったと思います。この分析の後、私は問題文の事実に、より意識を向けるようになります。自己添削のときも事実をきちんと拾って評価しているか、事案に即した論述になっているかを特に注意するようにしました。
また、判例についても、インプットする際は、事案の概要を確認し、有名なフレーズは使えるようにしようと努めました。これまで薄い論文問題集1冊に集中していたため、当然知識の穴は大きくなっていました。ただし、1冊を完璧に近く仕上げたことが合格の土台になったことは間違いないと思っています。
そこで、不合格後に、改めて論点の網羅性の高い問題集と論証集を購入し、これまで使用してきた問題集に掲載されていない論点の補充を行いました。それと並行して、答練を受講し、週4日は過去問を書き、週2日は答練を受講するペースとなりました。過去問を解く時も答練を受ける時も上記の改善点を強く意識して取り組みました。
二度目の予備試験受験挑戦(2021年)
この年の短答前は1か月半前から短答に専念し、前の年とほぼ同じような点数で合格。論文に向けて、この年は論点を網羅的にチェックしながら直前答練を受講しました。直前答練がない日は過去問です。結局過去問は、合計で5回以上取り組んだことになります。
そして、論文2回目の挑戦の当日を迎えました。この年は、教材は六法しか持参せず、試験会場では、昨年の反省点やこの年に受けた答練の反省点を思い返しながら、とにかく事案に即した答案を書こうと何度も自分に言い聞かせました。
論文試験後は、昨年同様、口述の過去問と司法試験の過去問に取り組みました。司法試験の過去問は出勤前に2時間で答案を書き、1時間+通勤時間で自己添削をし、夜は口述過去問1年分に取り組みました。司法試験過去問も口述過去問もあまりの難しさで心が折れそうになりつつも、どこか楽しみながら取り組んだのを覚えています。論文の合格発表までは毎日このリズムで勉強しました。
ちょうどこの頃、個別指導塾のリーガルゲートと出会いました。福田講師に自分の予備試験の論文の再現答案を使って指導いただきました。これまでは、ずっと一人で勉強していたため、孤独な日々でしたが、個別指導のおかげで、孤独も解消されただけでなく、答案を客観的に指摘してもらえ、タイムリーに質問もでき、自分の弱点を超短期に把握することができました。個別指導は、答案の添削サービスだけでは伝わらない合格者の思考をダイレクトに盗める最高の機会だと感じました。もっと早く出会っていれば、かなり時間短縮になったはずだと、悔しい思いをしたのを覚えています。
口述試験そして司法試験へ
いよいよ論文の合格発表日。半ばあきらめた気持ちで発表を見たのですが、自分の受験番号を発見してビックリしたのを覚えています。運よく2回目のチャレンジで合格できたのは、昨年の反省点の洗い出し、その克服に向けた行動が良かったのだと確信しています。
口述対策は一緒にやる人がいないため、口述過去問を使って試験官と受験生の両役を一人で行いました。論文試験に合格したとはいえ、法律用語を声に出すこと自体とても難しく感じました。アウトプットは本当に大事だなと思います。
また、刑法、民法、民訴、実務基礎を広く確認する必要があり、論文後からすぐに口述過去問に着手していたものの、口述直前期も仕事を休むことができずにかなり焦りました。ただ、口述模試を2回受け、一応の合格水準にいるとの評価をいただいたので、あとは当たって砕けろの精神で本番に臨みました。
刑事では基本的な事項を中心に聞かれていたのですが、途中で度忘れしてしまった瞬間があり、誘導されても思い出せず、とても焦ったのは良い思い出です。民事は終始和やかな雰囲気で終わったと思いましたが、だいぶズレた解答をしていたことが後で判明し、とても恥ずかしい気持ちになりました。
口述試験終了直後はまあ大丈夫だろうと軽く考えていましたが、時間の経過とともに自分の間違いを多く発見し、合格発表までとても不安になりました。予備試験の合格発表の中で一番緊張しました。
自分の受験番号を見つけて、うれしさはあるのですが、とにかくホッとしました。
司法試験に向けて決意の退職
ホッとしたのもつかの間、あと約半年で司法試験です。
ここで私は長年勤めていた会社を退職する決心をしました。集中して勉強して一気に最終合格しようと考えたのです。2月末に退職し、約2か月間専業受験生になりました。ラストスパートをかけるべく、今まで平日は4時間程度の勉強時間でしたが、退職してからは倍の8時間以上の計画を立てました。
ところが、思ったよりも勉強が捗りません。なぜかノルマはほとんど達成できず、さらに徐々に体調も悪くなったのです。後でわかったのですが、私にとっては、仕事をしながらメリハリつけた勉強が一番効率が良かったのです。
退職して勉強時間が増えた分、気になることが増えて、今まで手を出したくても時間がなくて手を出せなかった教材にいろいろと手を出し始めてしまったのです。その結果、見事消化不良を起こし始めました。これまでの受験生活の中で一番苦しいものとなりました。
やりたいことがあるのに、やれない。時間はあるのに、やれない。という日々が続き、これまで感じたことのないストレスを感じました。
このままではいけないと思い、4月中旬頃に2・3日思いっきり休み、その後、退職前のメニューに戻しました。そうしたところ、不思議ですが、またリズムが回復していきました。受験生活の最後の最後に、変な感じになりましたが、何とか司法試験本番を迎え、無事に合格できました。
終わりに
いろいろ試行錯誤しながら、運よく社会人受験生として予備試験、司法試験に合格できました。特に良かったことは、問題演習中心に勉強したこと、教材を絞ったこと、勉強内容をルーチン化したことだと思っています。問題演習は、実際に答案を書き続け、自分ができないことと日々向き合えたことが大きかったと思います。本当は基本書や演習書など、読みたい本はたくさんありましたが、なるべく我慢して厳選した教材をやり込みました。合格後から、受験生のときに読めなかった基本書や演習書を読み漁っています。私の体験記がすべての予備試験・司法試験受験生の参考になれば幸いです。