【司法試験予備試験】論文式試験攻略法(前編) ~概略と4つの対策方法~

こんにちは!リーガルゲート講師の福田尚史です。

今回は、予備試験における天王山となる、論文試験の攻略法について記事を書こうと思います。今回の前編で予備試験論文試験の概要と対策について、次回の後編で予備試験論文試験合格のための作法の習得について、2回に分けてお伝えします。

後編も含めた今回の2本立ての記事は特に力を入れて書いています(いつも頑張って書いてますが、いつも以上に頑張っています!)ので、是非ご覧ください。

それではいきましょう。

司法試験予備試験 論文式試験の概略

まず、予備試験の論文試験は例年7月上旬に行われる試験であり、短答試験に合格することで受験資格を得ることができます。仮に論文試験に不合格となると、翌年はまた短答試験から受験する必要があります。

論文試験の形式は、だいたい1~2ページ程度の問題文が出題され、1科目あたり4ページ(1ページあたり22行)以内で論述し、問題文の設問に論文形式で答えるものです。

白紙の答案に論述していくスタイルの試験は珍しく、予備試験や司法試験に特有のものであると思います。

論文試験の試験科目、試験時間及び配点はそれぞれ以下の通りです。

試験科目 試験時間 配点
憲法 公法系(憲法と行政法)で合計140分 50点
行政法 50点
民法 民事系(民法、商法と民事訴訟法)で合計210分 50点
商法 50点
民事訴訟法 50点
刑法 刑事系(刑法と刑事訴訟法)で合計140分 50点
刑事訴訟法 50点
民事実務基礎 実務基礎系(民事実務基礎と刑事実務基礎)で合計180分 50点
刑事実務基礎 50点
選択科目(2022年から) 70分 50点

※選択科目は2021年で廃止される一般教養の代わりに2022年から導入される科目であり、司法試験と同様、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際公法、国際私法のいずれかから1科目を選択して解答する形式になっています。

ここで、過去5年間に行われた予備試験論文試験の合格点と合格率の推移をみていきましょう。

【合格最低点の推移】

平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
245点/500点(49%) 245点/500点(49%) 240点/500点(48%) 230点/500点(46%) 230点/500点(46%) 230点/500点(46%) 255点/500点(51%)

上記の通り、合格最低点はだいたい40%代後半の得点率となっています(意外と低い?)。

次に、合格率です。

年度 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
受験者数 2327人 2200人 2551人 2580人 2439人 2633人 2695人
合格者数 429人 469人 459人 494人 464人 479人 481人
合格率 約18.4% 約21.3% 約18.0% 約19.1% 約19.0% 約18.1% 約17.8%

このように、過去5年間ではだいたい10%代後半から20%代前半の合格率となっています。

約半分の得点率で合格できるとはいえ、短答試験に合格した強者受験生達の中でも5人に1人程度(全受験生の人数を基準にすると約4%程度)しか合格できないことをふまえると、合格は容易とはいえない状況です。

特に、例年論文試験合格者の大半は大学生か法科大学院生となっており、社会人の方はかなり苦戦している印象ですので、短答試験以上に論文試験対策は万全に行っておく必要があります。

ではここから、予備試験論文試験の攻略法として、具体的な対策に入っていきましょう。

司法試験予備試験 論文式試験の対策法その1~前提と合格戦略~

(1)前提

【予備試験】短答試験攻略法の記事において、予備試験の短答試験は勉強時間さえ確保できれば合格できる可能性が高いと述べましたが、論文試験においては少々(というか相当)違います。予備試験論文試験対策として、勉強時間の確保は合格の必要条件であることは短答試験対策と同様ですが、勉強の方向性を間違えると、いくら勉強しても合格までたどり着くことはできません。誤った方向で勉強しているために、逆に合格からどんどん遠ざかってしまうことも多々あります(特に周りに勉強仲間がいない社会人の方や、旧司法試験や新司法試験受験経験者等のいわゆるベテラン受験生の方にその傾向がある印象です。)。

そういった意味では、「やれば受かる」短答試験とは異なり、論文試験の対策においては、「正しい方向への勉強を、なるべく多く確保すること」が合格に必要といえます。

そのため、自分の勉強の方向性については常にチェックしながら、勉強を進めるようにしましょう(勉強の方向性をプロにコントロールしてほしい方は、是非リーガルゲートの個別指導の利用を検討してみてください。)。

ちなみに、私が予備試験に合格した年の論文試験の成績は二桁後半の順位(全論文試験受験生の上位3%程度)であり、比較的余裕をもって合格することができました。ただしここに至るまでの苦労はたくさんあり、決して楽に合格できたわけではありませんでした。

論文試験については相当時間をかけて対策をしていましたので、そういった私の経験等もふまえて予備試験論文試験の攻略法についてお伝えしたいと思います。

(2)合格戦略

合格戦略というと大げさですが、予備試験の論文試験対策をするにあたり、注意しておいてほしいことがあります。

それは、「完璧を目指さず、落ちない答案を書くことを心掛ける」ということです。

予備試験の論文試験については、自分の書いた答案について、以下の通り順位別でA~Fのランクで評価されます。( )の中はそれぞれの評価の答案がどのくらいのレベルなのかを(私の経験と独断と偏見から)表したものです。

A 1位~300位 (高度なことは書いていなくても、論点を外さず、作法にのっとって基本的な事項について丁寧に論述できているレベル)
B 301位~600位 (Aに準じるレベル。実際超上位のA答案以外はAもBもそんな大差ないのではという印象)
C 601位~900位 (論点は外してなく、おおむね書くべきことは書いているものの、評価が甘かったり、答案のバランスが悪かったり、問題文の事実を使え切れていなかったりと、どこか物足りないレベル)
D 901位~1200位 (Cに準じるレベル。大筋は外していないけど物足りないレベル)
E 1201位~1500位 (何となく書きたいことはわかるけど基本的事項の理解ができていなかったり、ごちゃごちゃしていて厳しいなーというレベル)
F 1501位~ (論点を大外ししていたり、時間切れで途中答案になっていたりと割と論外なレベル)

注意点としては、予備試験の論文試験において合格するために、全ての科目についてAを取る必要は全くないということです(そんな人は全受験生のうち10人もいないでしょう。)。

実は、全ての科目を平均した時にCを取れていれば、予備試験の論文試験にはぎりぎり合格できます(平均するとは、例えばAとCを1つずつ取った場合、2つを平均するとBになるといった感じです。)。

たとえばDを2科目分とったとしても、他でB以上の科目を2つ以上そろえれば平均してCを取れている計算なので、挽回できるのです。

これを踏まえて、私が考える、論文試験における基本的な戦略は以下の通りです。

  • ①どの科目においてもEやFを取らないようにすること
  • ②刑事系(刑法、刑事訴訟法)や実務科目(民事実務基礎、刑事実務基礎)ではなるべくA(少なくともB)を狙うこと

①については、AやBは上位答案であるため、狙っていくつも取ることは容易ではありません。
そんな中で、EやFを取ってしまうと、どこかでAやBを取って挽回する必要が出てしまい、かなりのディスアドバンテージとなります。さらにいうと、Fがついてしまった科目はほとんど点数がもらえない(=ほぼ0点)場合もあり、Aを1つとっただけで挽回できるかは正直微妙なところです。

そのため、苦手な科目や受験した年に難化した科目であっても、最低でもDくらいでとどまることができる力を身に着けておくと、かなり合格に近づけると思います。

実際のところ、予備試験の論文試験において問われている力はどの科目にも共通しており、実力がついた状態であれば、特定の科目だけいつもEやFレベルの答案を書いてしまうということはなくなるはずです。

一方、②については、民法や憲法といった科目は基本的に試験本番までに準備していたことだけでは解けず、高度な現場思考が必要となる傾向がある(かつ基本的な科目であり対策に時間をかけている受験生が比較的多い)点で狙ってAを取ることは難しいのに対し、刑法や刑事訴訟法といった科目は、事前準備でほぼ勝負が決まる性質のものであると考えているからです(司法試験だとまた少し違うのですが、少なくとも予備試験ではその傾向が強いと思います。)。

語弊を恐れずにいえば、刑法や刑事訴訟法は、「論証貼り付けゲーム」な要素が結構あります。そのため、これらの科目は狙ってAやB等の高評価を取りやすいと考えます。

また、民事実務基礎や刑事実務基礎といった実務系の科目は、現場思考の問題はそこそこ出てくる(論証貼り付けゲームではない)ものの、対策の内容がある程度固まっている(民事実務基礎であれば要件事実、刑事実務基礎であれば刑事手続等。定番の書籍等も割と固まっています。)ことに加え、他の受験生がそれほど万全に対策しきれていない科目であるため、こちらについても狙ってAやBをとることが可能であると考えます。要は実務系科目はとてもコスパが良い科目なのです。

「実務科目が苦手!」という受験生は比較的多い印象ですが、私からするととてももったいないです。民法でAをとるよりはるかに効率的にAが取れる科目だと思いますので、「基本7科目のおまけだろう」などと思わずに、しっかりと対策をして高評価を狙えると良いです。

仮に刑事系科目と実務系科目でAやBを中心に取ることができれば、他の科目でDやEをいくつかとってしまっても、十分に合格水準に乗ることができます。

この戦略を取って実際に合格できた私の受講生は何人もいます。もちろんこれ以外の戦略を否定するつもりは全くないですが、効率的に合格するという観点から、この戦略を参考にしてみてください。

私も受験生の時はこの戦略を常に意識していたことで合格の可能性を高められたと思っています。

司法試験予備試験 論文式試験の対策法その2~学習内容①過去問~

では具体的には何を使って勉強するのか、それはやはり過去問を繰り返し解くことが一番重要でしょう。
過去問を使い、出題された論点の書き方や評価の仕方等を学ぶことによって、論文試験に必要な作法を身に着けることが合格のための王道といえます。

過去問というのは、具体的には予備試験の過去問、旧司法試験の過去問を使うのが良いです。

ちなみに、予備校であれば論文講座がありますし、市販のものでもこれらの過去問がまとまったものが売られているため、教材に困ることはあまりないのかなと思っています。

最初は問題を見ても全くわからない状態だと思いますが、2回目、3回目、4回目…と繰り返し解いていくうちに、少しずつできるようになっていくと思います。根気強く、繰り返し解いていきましょう。

ちなみに、人によって差もあるので一概に整理するのは難しいのですが、例えば私の場合は以下のような感じでレベルアップしていきました。

なお、私は大手予備校の論文講座を取っていました。例の塾長の名前が塾名になっている予備校です笑 他の予備校をほめるのはあれですが、大手ということもありとても分かりやすく、講義についていくために必死に勉強することができたので、非常にありがたかったです。基本的に1人でできる天才タイプの人以外は、最初はこのような予備校を使って論文の講義を使った方が良いと思っています。特に伊t…じゃなくて私の通っていた大手予備校とかは質も良く、安定感抜群でとてもおすすめです!笑

(福田尚史の例)

1周目:論文講義の予習として旧司法試験の過去問の答案構成を試みるもほぼできず、5分くらい論点に関する論証だけとか何か書いて終わる(もらったばかりのヒトカゲでなぜかいきなり四天王に挑み玉砕、どうすれば勝てるかわからないけどとりあえず四天王がめちゃくちゃ強いことだけはわかるみたいな感じ。)

2周目:論文講義を一通り受講し終えた後に、再度自分で答案構成をしてみる。1回目よりは少し書けるものの、まだ全然出題趣旨に沿った解答はできずボロボロ。論証の暗記とかは並行して行う。(四天王はまだ無理なので、ステップアップとしてまずは弱いジムリーダーに挑み、なんとか倒せるようになってきたみたいな感じ)

3周~5周目:徐々に出題趣旨に沿った解答ができるようになる(単に解答を覚えていたということもあるが。)。15分~20分で答案構成して、同じくらいの時間で解答例をみたり自分の答案を自分で添削したり。ただまだ論点落としがあったり、評価の仕方がうまくできなかったり、甘いところが散見される。(ヒトカゲはリザートになり、手持ちのパーティーも強くなってきたけど、まだまだ四天王に勝てる実力はなく、ひたすら修行だ!という感じ)

5周目~:ここからは出来なかった問題とか重要度の高い問題とか(旧司法試験の問題文が短い問題は切り捨てたりしてました)に絞って答案構成を行い、ブラッシュアップ。結構合格答案に近いものを書けるようになる。多いものでは10周くらい回したものもある(リザードがリザードンに進化して、四天王に勝つためのイメージが具体的にわいてきている感じ)

これに日頃のインプットや答練、模試等もプラスしてブラッシュアップし、ようやく手持ちのリザードンや他のパーティーで四天王に勝てるレベルになったという感じでしょうか。

ちなみに、ポケモンの例がよくわからんという意見は全面的に認めます。

なお、何のためにそんなに繰り返し回して解くのかという点は間違えないようにして下さい。ここは重要ですよ!

「同じ論点を解けるようになるため」なんていう理由ではありません。同じ問題なんか出ないし。論点が同じだったばっかりに自分の解いた問題に引き付けられてしまい、本番の問題にしっかりと向き合えなくて失敗することはままあることです。

繰り返し解くのは、先ほども少し述べた、論文試験の作法を身に着けるためです。詳しくは後編の記事で書きますが、要はどんな問題でも問題文の事実にしっかりと向き合って評価するとか、法的三段論法を守るとか、そういう(全科目に共通するような)抽象的な思考方法を身に着けることです。

この作法をしっかりと身に着けて血肉にすることができれば、正直合格は固いと思っています。私も、知識量や解いた問題量とかはそれほどでもなかったと思いますが、同じ問題を繰り返し解くことでこの作法を盤石にすることができていたので、正直予備試験に合格した年(翌年の司法試験も含めて)は落ちる気がしませんでした。自分が解いたことのある問題ならそのまま書けばいいし、知らない問題でもこの論文試験の作法に従っていつも通り書けば、必ず合格答案になると確信していたからです。それほどこの作法の習得は強力だと思います。

この作法を身に着けるには、(手前みそになってしまい恐縮ですが)間違いなく個別指導がベストでだと考えます。独学で勉強していたために、解答例や論点を暗記しているだけになってしまい、この作法が身に着けられなくなってしまったという方は実際私の知っているだけでも非常に多くいます。常に合格者の方に自分の答案を客観的にみてもらいながら、常に作法を意識してブラッシュアップしていくことが、論文試験に確実に合格するための一番の王道であると思います。

事情により個別指導を受けられない方は、答練や模試等を利用して、第三者に答案を評価してもらうよう意識すると良いと思います。

予備試験や旧司法試験の過去問を繰り返し解いて、盤石な作法を身につけましょう!

司法試験予備試験 論文式試験の対策法その3~学習内容②答練の活用~

ここからはポンポン進めますが、過去問と並んで重要なのは、答練の問題を実際に書いてみることです。答練とは、各予備校が行っている答案練習会の略で、実際の予備試験の問題に近い問題を解くことができます。ある論点について、頭でわかっているというのと、実際に答案の形で書けるというのは、だいぶ差があります。そのため、答練を使って、実際に答案の形で表現できるレベルまでもっていくことは非常に大切です。答練であれば、(個別指導程丁寧なフィードバックはもらえませんが、)合格者から添削してもらえることも強いと思います。

私も、上述した過去問の答案構成に加え、答練を使って実際に答案を書くようにしていました。答練でなく予備試験の過去問を使って答案を書くのでももちろんOKですが、いずれにしろ、答案を実際に書く機会は定期的に設けるようにしましょう。

司法試験予備試験 論文式試験の対策法その4~学習内容③論文用のインプット~

予備試験論文試験の対策として、他に重要なことは、論文用に知識をインプットするということです。

ここで重要なことは、「論文用に」という点です。短答試験と異なり、予備試験の論文試験では、出題され得る範囲がかなり絞られています。出題され得る重要分野の知識について、正確に理解し、正確に暗記し、正確に答案に反映する必要があります。単に知識を増やせばいいわけでは全くありませんので、この点は注意して学習しましょう。

この点は、予備校であればAランク、Bランク等とメリハリをつけてくれるので、そこで重要と言われた知識についてはしっかりと押さえておく必要があります。

そうでなくても、予備試験や旧司法試験、答練で出題された事項については、重要知識である可能性が高く、また他の受験生も抑えている可能性が高いため、差をつけられないためにも押さえておくようにしましょう。

司法試験予備試験 論文式試験の対策法その5~選択科目~

最後は、選択科目についてです。2022年から、予備試験の論文試験において、一般教養が廃止され、選択科目が出題されるようになりました。

新たに勉強しないといけないため多少厄介ですが、どうせ司法試験で出題されるものでもあるので、割り切って(なるべく早い段階から)勉強するようにしましょう。

どの科目を選択すべきとかは特になく、自分の興味があるかどうか、勉強しやすいかどうか、予備校の講義や教材がそろっているかどうか等を総合的に考慮して決めればいいと思っています。

勉強の方法も、基本的には他の科目と変わらず、手っ取り早く習得したいなら予備校の講義とかを取って答練を受けたり、市販の教材を使って練習することで足りると思います。まだ出題実績がないので何とも言えませんが、いきなりそれほどハイレベルな戦いにはならないと思うので、基本的事項を押さえて答練や市販の教材で他の科目と同様の勉強をすれば大丈夫ではと思っています。

終わりに

前編だけでかなりのボリュームになってしまいましたが、いかがだったでしょうか。

上述した通り論文試験は予備試験における天王山です。予備試験の論文試験に受かれば口述試験はほぼ受かるし、翌年の司法試験もほぼ受かります。そのため、実際予備試験受験生が一番力を入れて対策するのがこの論文試験だと思います。

今回と後編の記事で論文試験攻略のエッセンスをお伝えするつもりですが、このエッセンスについては、頭でわかっているだけの状態ではもちろん合格することはできず、日ごろの勉強でこれらを実践し、身に着けていく必要があります。合格までの道のりは短くはありませんが、上述した通りの勉強をして盤石な実力を身に着ければ、論文試験に合格できる可能性は非常に高いと思います。

なかなか成果が出ず悩んでいる方、1人で確実に合格できるか不安な方は、是非個別指導塾LegalGateに問い合わせてみてくださいね!

予備試験を受験する1人でも多くの方が、この記事を参考に、論文試験を突破できれば何よりです。

それでは、今日も頑張ってください!

後編に続く。

 

2021年7月某日 オフィスの近くの喫茶店にて 福田尚史